ピアノ演奏推論システム

研究概要

1996年に本研究室で、人間らしい演奏を再現することを目的とし、図1のグランドピアノを用いたピアノの自動演奏装置が開発された。この装置が人間らしい演奏を行うには、1音ごとに、音の強さ、長さ、テンポなどの抑揚のついたデータが必要となる。このため、楽譜のデータを装置に入力するだけでは、平坦な音が再生されるだけであった。そこで、本研究では楽譜のデータから人間の演奏のような抑揚のついた音を推論するシステムの開発を目指している。

グランドピアノを用いた自動演奏装置
図1 グランドピアノを用いた自動演奏装置

図2に月光第一楽章の一部を例として示す。この楽譜では、ある音の長さを均等に三等分した三連符が4つ並んでおり、楽譜上では全12個の音符の長さは同じである。しかし、実際に人間が演奏すると一音ごとに音の長さが異なるというデータが得られた。また、これは演奏する人間によっても異なるデータが得られた。このことから、抑揚のつけ方は個人によって異なり、一般化は困難である。そこで、人間のような抑揚のついた音を推論する一歩として、世界的に有名なピアニストらの演奏を指標とし、これを再現することを試みている。

演奏データの比較
図2 演奏データの比較

近年では、機械学習を用いた推論システムの開発を行っている。開発するにあたり、推論に最適なネットワーク構造を見つける必要があるため、まずは単純なネットワーク構造でシステムを構築し検証を行った。図3は構築したネットワーク構造の概略である。

ネットワーク構造概略
図3 ネットワーク構造概略

構築したシステムを学習させるにあたり、演奏データを使用した。しかし、演奏データはそのままの状態では機械学習で扱うことが難しいため、本研究では演奏データを楽譜情報と演奏情報に分けて抽出し、機械学習で扱うことができるようパラメータを設定した。図4、5に楽譜情報と演奏情報を示す。

楽譜情報
図4 楽譜情報
演奏情報
図5 演奏情報

本研究では、音の推論に適したネットワーク構造を探索しながら、独自の機械学習モデルを構築することを目指す。

演奏比較

楽譜データをそのまま演奏した音源と開発したシステムで推論した音源のファイルを掲載しています。楽曲はPrelude Op.28-7を使用しています。

楽譜データによる演奏

推論システムによる演奏